かつて、一眼レフカメラは標準レンズを付けて買うのが当たり前だった。 最もポピュラーな交換レンズは単焦点の28mmと135mmで、 メーカーは口径の違ういくつかのレンズを揃えていた。 ズームレンズの性能がアップし、価格も下がってくるにつれ、 単焦点レンズは大口径化し、暗めの地味なレンズは徐々に整理、統合されることになる。 G.ZUIKO 28mmF3.5 も、そうした流れの中で消えて行ったレンズのひとつだ。 手元にある「OMシステム価格一覧表」を調べてみると、 S55年8月15日現在、28mmはF2とF3.5の2種。 S56年5月20日にF2、F2.8、F3.5に増え、11月15日付けでF3.5の記載はなくなる。 因みに、F3.5の価格は27,000円。 対するF2.8は26,200円で、多層膜コーティングが施され、重さも10g軽くなった。 明日は今日よりも良い、右肩上がりが当たり前の時代であった。 中学の頃、カメラに詳しい級友がOM-2とこの28/3.5を持っていた。 カメラのカタログを見てはため息をついていた少年時代の自分にとって、 レンズは大きくて明るいほど “いいレンズ” だった。 「なぜエフニではなく、暗いサンハンなのか?」 そのことが小さな棘のようにずっと引っかかっていた。 あるとき、突然その疑問は解消することとなる。 暗い室内でのスナップ撮影で、彼はカバンからさっとT20を取り出したのだ。 小型軽量+ダイレクト測光によるTTLオートストロボというOM-2の真髄がそこにあった。 宇宙からバクテリアまで。 カタログに謳われていた米谷氏の設計思想 “システムとしてのOM” を、 級友は正しく理解し実践していた。 28mmF3.5はまさに足るを知るレンズだったのである。 それ以来、私はこの小さなレンズをたいへん好ましく思っている。
by kurobei-leica
| 2011-03-30 18:41
| olympus
| |||||
ファン申請 |
||